長年、カーペットはダニやアレルギーの温床であるとの否定的な風評にさらされていましたがようやくその呪縛から逃れることができました。カーペットは硬質床材よりも埃やアレルゲンを空気中に出さないという点で優れていることが明らかになった。
米国国立衛生研究所(National Institute of Health)の国立心肺血液研究所(National Heart,Lung and Blood Institute:NHLBI)が、喘息やアレルギーに苦しむ人々を保護するためにカーペットを硬質床材に交換すべきであるという従来の勧告を撤回すると発表したことにより、長年にわたって否定的なイメージを払拭する努力を続けてきたカーペット業界は、ついに勝利を手にすることができました。実際、Carpet and Rug Institute(CRI)によると、ここ数年の多くの研究で、適切にメンテナンスされたカーペットは、硬質床材よりも埃やアレルゲンを空気中に出さないという点で優れていることが明らかになっています。
カーペットが喘息やアレルギー患者に良い影響を与えるか、悪い影響を与えるかは、過去半世紀の間、フローリング業界で最も重要な議論の一つでした。1970年代初頭にスウェーデンで始まったこの議論は、様々な協会や支持団体が、医学的な裏付けがないにもかかわらず、カーペットが喘息やアレルギー患者の健康に有害であると判断したことに端を発しています。しかし、それがきっかけとなって、スウェーデンをはじめとする近隣諸国、さらには世界中でカーペット離れの波が進んだのです。
カーペットの微粒子捕集性能は、一見すると理にかなっているように見えます。まず、カーペットは硬い床材に比べて、1平方フィートあたりの微粒子が付着する表面積が計り知れないほど大きいのです。第二に、微粒子は空気の動きから守られたカーペットに定着しますが、硬質床材の場合はわずかな風でも飛ばされてしまいます。これについては議論の余地はありません。カーペットはホコリやアレルゲンの貯蔵庫であり、硬質床材はそうではありません。これで一件落着でしょうか?
どうやら、この論理は揺るぎないもので、誰も科学的なプロセスで検証する必要性を感じでいなかったようです。2007年には、アメリカのNHLBIが、カーペットがあると症状が「悪化する」という報告書を発表し、反論の声が高まりました。この報告書では、カーペットを「促進・悪化要因」とし、カーペットをビニール製の床材に置き換えることを推奨しています。この報告書は2007年に出されたもので、ビニールメーカーが一斉にフタル酸エステル類(内分泌かく乱作用に関与する化学物質の一種)をより危険性の低い化学物質に置き換える動きを見せる前のことであり、おそらくNHLBIはこの問題を十分に理解しないまま結論を出したのではないかと思われます。
更新版ガイドライン
12月3日に発表された新しい報告書「2020Focused Updates to the Aathma Management Guideline」では、アレルゲン緩和のための介入に関するエビデンスの確実性について、カーペットの除去に関しては、エビデンスの確実性の低さを反映して「介入は差がない」とされています。
今回のNHLBIの指針変更は、CRIが過去8年間にわたり、米国国立衛生研究所の専門委員会で業界の専門家に証言してもらい、カーペットが室内空気の質の面でポジティブな役割を果たすことを示す研究結果を提示するなど、提言を見直すための取り組みを行ってきた結果でもあります。